運動に影響を与えるイメージの世界とは
当記事に興味を持って頂きありがとうございます。です。
皆さんは、運動に影響を与える「イメージの世界」について、どのように考えていますか?

個々の運動経験がイメージになるのかな・・・・・

運動経験もイメージに含まれます。他にも環境や感情など多様な要因がイメージを作り、運動に影響を与えています。
一般的に「運動神経が良い人」や「スポーツで活躍するプロ選手たち」が、どのようにイメージを活用して運動に影響を与えているのか、興味を持ったことはありませんか?
もちろん別の記事に記載しましたが、他者のイメージを完全に理解することは不可能です。
しかし彼らの運動に影響を与えるイメージと実際の運動がどう影響を与え合うのかという関係を理解することは可能だと思います。
本記事では、私たちが無意識に行っている運動と「イメージ」の関係について、身近な例と共に詳しくお話しします。
下記において順を追って説明していきます。
「イメージ」ついての記事を合わせて読むと、より深い理解が得られると思います。

イメージが使われる場面について考えてみよう
それでは、運動においてイメージが使われている場面について考えてみましょう。
例を以下に記載します。
自己・他者・モノを頭に思い浮かべる
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自分の身体を実際に動かしているような感覚で思い浮かべることを指します。
視界に自分自身は見えません。
例えば、巨大ロボットをロボット内部の操縦席から操作する感覚に似ています。
この視点では感覚が大事になります。
一人称視点に立ち、自分のアクションに対して相手が反応する、あるいは相手のアクションに自分が反応する。
このような相互的なやり取りを、直接的関係のある相手との間で具体的にイメージすること。
自己・他者・モノを第三者視点から思い浮かべることを指します。
たとえば、サッカーゲームにおけるカメラ視点のように、自分自身の動きや周囲の状況を少し引いた位置から俯瞰的に捉えるイメージです。
動きのシミュレーションをする
実際に身体を動かさずに、心の中で目的の動きや運動の過程を再現することを指します。
「ビジュアライゼーション」とも呼ばれます。
運動を起こす前(運動中の切り替えも含む)
運動を行う前に、脳内でイメージを含む処理を行い運動が起こります。
例えば、走る際は「どこに向かい(方向)」、「どれくらいのスピード(速さ)」で、「どんな走り方(フォーム)」で、「何処まで(ゴール)」走るのかを自動的又は選択的に脳内で処理しています。
そしてイメージは変更可能で、途中で止まることも、方向を変えることなどもできます。
用具に持つイメージ
用具とは特定の用途に使用する道具のことを指します。
一部の用具においては、意識を向けるとその用具からイメージが自然と思い浮かびます。
例えば、【野球ボールを見れば、手で投げる・バッドで打つ】、【サッカーボールを見れば、足で扱う(実際は足以外も使う)】、【バスケットボールを見れば、手で扱う】といったルールを知らなくても其々の特徴や場面がイメージとして浮かんできます。
外界からの影響を考える時
自分自身の外側の世界から受ける影響と運動を関連させてイメージする時を指します。
例えば、雨天後に学校の校庭で遊ぶ際は、「滑りやすいこと」や「泥が跳ねること」などがイメージされ、実際の運動において走るストライドが狭くなったり、スピードを抑えたりなど影響を与えます。
他の外界からの影響について以下に記載します。
過去の体験を思い出す時
過去に体験した事象を思い浮かべる時を指します。
例えば、【運動会の徒競走で一位になった時】の一連のスタートからゴールまでの流れを思いだします。
運動の精度を上げる為の「ゴール・軌道・焦点等」の目印的役割
対象物に対して視覚的な目印を設定し、それを基準にして運動をイメージしたり、実際に動作を行ったりすることを指します。
例えば、サッカーでロングボールを蹴る際に、ボールの特定の位置や自分の蹴り脚に意識を集中させる場合や、野球でバッティングする際に、バットの「スイートスポット」と呼ばれる理想的な当たり所を目印として意識することが挙げられます。
空間認識する時
自分自身と外界の対象物との間にある空間的な関係をイメージすることを指します。
例えば、サッカーでボールを蹴る際に、助走を始める位置からボールまでの距離や、パスを出す相手との距離、蹴る瞬間の軸足とボールの位置関係、歩数などを頭の中で思い描くことが挙げられます。
また、おにごっこのような遊びにおいても、相手との距離や位置関係、自身の立ち位置をイメージすることが空間的な認知として働いています。
メンタルリハーサル
動きのシミュレーションをより細部まで意識して行うことを指します。
視覚イメージだけでなく感覚イメージも取り入れ、より詳細な状況を作り出し行います。
例えば、大事なテニスの試合の為に、試合中の視覚・感覚イメージだけでなく、試合に向けた心身のコンディショニングやピーキングなど広範囲に渡りイメージすることが挙げられます。
イメージリハーサル
メンタルリハーサルより、特定の動作やシーンに限局したイメージを思い浮かべることを指します。
例えば、【テニスのサーブ】において、視覚以外に「周囲の環境音」や「感情」、「思考」、「テニスラケットやボールを握る感覚や弾む感覚」、「インパクト時の音」、「スイングが風を切る音」等まで思い浮かべて行うことが挙げられます。
運動に対してイメージ活用がスムーズにいかない場合とは
前記において、運動においてイメージが活用される場面をいくつか挙げました。
大部分が、運動を頭の中で思い浮かべることでしたがいくつかは実際の運動にもイメージは関与していることも挙げました。
そもそも運動とイメージを切り離すことの方が難しいです。
しかし、運動にイメージ活用がスムーズにされない場合もあります。
以下にいくつか記載します。
「絶対」にイメージが出現しないわけではないことに留意してください。イメージは無意識的な脳の処理でも利用されています。
フロー状態
-
個人が現在に没頭し、集中している状態を指します。
この時、過去・未来に意識は向かず直感が最適化され、自動化された運動が起こります。
個人は、ポジティブな気持ちを抱きながらも、意識的にその一連の運動を全ては覚えていません。
非常に強い注意や集中が必要な場面
-
ミスを許されない場面や命に係わる場面においてイメージは抱きにくいとされています。
例えば、組体操における「やぐら・ピラミッド」が挙げられます。
少しのミスで失敗、あるいは自身や他者が危険に陥る可能性があります。
極度の疲労・睡眠状態
-
心身が疲れ切った状態では、脳内での情報処理にイメージが湧きにくく、運動の質が低くなる可能性があります。
防衛機制
-
心理学者のジークムント・フロイトが提唱した無意識的に自身を守る心理的メカニズムを指します。
例えばその一つに「抑圧」があり、過去の運動経験における失敗がトラウマとなり、無意識にその記憶や感情を抑圧します。
そうすると運動におけるポジティブなイメージも抑圧してしまうことがあります。
極度の注意散漫・無気力状態
-
身体的・精神的なエネルギーが低下している状態で、うつ・ADHD・慢性疲労症候群・不安障害・ストレス障害といった心理的状態を指します。
そのため集中することが困難で、運動におけるイメージも湧きにくくなります。
深い瞑想状態
-
心を「無心」にし、思考や感情を制約するため、イメージが湧きにくいことを指します。
「フロー状態」に近い状態であると考えられます。
アルコール・薬物の影響
-
アルコールや薬物は脳に影響を及ぼします。
そのため、イメージは脳の情報処理に含まれるため悪影響を受けます。
以上のように、運動にイメージ活用がスムーズにできない場合をいくつか記載しました。
上記を経験されたことはありますか?

サッカーで大事な大会に急遽出場することになり、極度の緊張と不安で頭が真っ白、案の定何もできずに終わった記憶がある。。。

そうなんですね。スポーツに限らず、ビジネスやプライベート、学校など様々な場面で起こりうることですね。イメージが行動に影響を与えているという事です。
イメージ活用がスムーズにできていないことを、自覚することもできていないかもしれません。
運動やスポーツの場面において、プレー直後にコーチやチームメイトから「今のプレーの意図は?」とビジュアルについて聞かれることがあると思います。
そこで具体的な回答ができないと、「集中していない・考えていない・やる気がない」などと一方的な評価をされる場合があります。
しかし、イメージや支店の切り替えに関する知識が頭にあれば違った解釈や思考ができ、より選手の状況を理解することが出来ると思います。
自分自身においても矢印を向けて、体調管理やトレーニングを含むマネジメントを行うことで、上記の状況を改善することが出来ると思います。
次では、運動におけるイメージとは、何なのか、そしてどのように運動に影響を与えているのかについて説明したいと思います。
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運動におけるイメージの概念
さて、運動においてイメージとは何でしょうか、そしてどんな関係があるのか、もう少し詳しく見ていきましょう。
イメージは、「外界の情報の受け入れ」と「内的な状況」の相互関係を通じて心に現れる表象です。
心に現れる表象は、必ずしも視覚的なものに限りません。他の感覚、たとえば聴覚や触覚などを通じて生じることもあります。
以下に詳細とともに、運動に焦点を当てた説明を「おにごっこ」を例に挙げて記載します。
外界の情報の受け入れ

- 無意識的
- 意識的
自分自身は自覚していないが、外側の世界の刺激は感覚受容器を通じて、脳内で常時処理されています。
そのため当たり前に目の前の情景、他人の声や動物の鳴き声、食べ物の香りや味、暖かい暖房の風などを感じられます。
おにごっこでは、参加者の位置や分布、その動きに加え、地面の材質や状態、鬼ごっこの範囲(広さや危険なエリア)、隠れ場所の有無といった要素を、私たちは無意識のうちに脳で処理しながら行動しています。
また、状況は刻一刻と変化しており、鬼役が誰に照準を定めているか、周囲の参加者がどのように動いているかをリアルタイムで捉えています。
さらに、参加者それぞれの運動能力やスキル、疲労の度合いなども選択的に処理し、瞬時に判断して行動を決めています。
外界の情報を無意識的に認識しながらも、ある事物や事象に意識的(自覚)に焦点を当てた際には、意図的にそれらを解釈・判断しています。
これは、イメージの一部でもありますし、内的状況との関係が含まれます。
無意識的な処理をしながらも、意識をおに役に向けて、位置や距離感、進行方向、足の速さ、目線などから多くの情報を得ています。
また、おに役との動きの駆け引きや参加者同士との協力でさらに新たな情報を得ることが出来ます。
それらを材料に自分自身の位置と運動能力から鑑みて、動くべきか・留まるべきかなどを流動的に考えます。
後半部分は内的状況との関係が含まれています。
内的な状況

- 無意識的
- 意識的
記憶や過去の経験、抑圧、葛藤、感情、思考、価値観、アイデンティティ、防衛機制、身体的反応、直感、自己規制などがあります。
これらは自覚せずに、行動に影響を与えています。
おに役がどこに向かうのかを【過去の経験】や【直感】を頼りに予測を行います。
また、人は本能的に「闘争・逃走反応」を持っています。
狙われたり追いかけられるという緊張感は、感情(恐怖や焦り等)を伴い、走るスピードが上がり、筋肉が緊張し、心臓がバクバクしたりと【身体的な反応】が起こります。
そしてこれらは、自身が持つ身体に対する自己評価も関連します。
例えば、「私は足が速い」、「私は足が遅い」が挙げられます。
記憶や過去の経験、抑圧、葛藤、感情、思考、価値観、アイデンティティ、防衛機制、身体的反応、自己規制があります。
例えば、無意識的に感じた内的な感情を、意識的にメタな視点で考えることが出来ます。
また、無意識の直感的な思考を意識的に捉え、直感を信じるのか論理的に再考するのか選択できます。
何か特定の記憶を思い出そうとすることも意識的です。
私たちは【過去の経験】や【思考】をもとに、「計画」や「戦略」を立てることができます。
たとえば、誰もいないエリアへ移動するか、人が密集している場所に行くか、足の遅い人や疲れている人の近くに行くか、あるいは身を隠すかなどを、意識的に判断して行動に移します。
また、心身を落ち着かせるために、深呼吸をしたり、ペースを落としたり、休息を取ったりする行動も含まれます。
さらに、スリルを楽しみたい場合には、おに役との駆け引きを楽しんだり、他の参加者と協力しておに役を誘導したりすることもあります。
誰かを助けたいという思いがある場合、自ら囮(おとり)になることも一つの選択肢です。
ここで関連する概念として、「身体アウェアネス(身体的意識)」という用語があります。
これは、自分自身の身体に意識的な矢印を向け、身体のどの部分が、どのように動いているのか、どこに力がかかっているのかといった感覚を認識することを指します。
この意識を高めることで、動きの質やパフォーマンスの向上につながる可能性があります。
「外界の情報の受け入れ」と「内的な状況」を意識的と無意識的に分類し記載しました。
しかし前記した通り、切り離して考えることは難しく、それぞれが複雑に相互に影響を与え合い生まれるのがイメージです。
そのため、分類内の説明も、他と重複するようなこともあります。

言語化すると、イメージを構成する要因の多さにビックリしますね。運動とイメージが密接に関係しているのが理解できます。スポーツや運動における有名選手を模倣してもその選手にはなれないですね。

そうですね。イメージは「はっきり」したものから「ぼんやり」したもの「自覚していない」ものまでありますが、運動に影響を与えているのは間違いないですね。
有名選手の模倣は、スキルなどの獲得や向上に寄与します。
しかし、それ以外のその選手が持つイメージを理解することは不可能です。
100歩譲ってイメージが理解できても、それを自分のイメージに取り入れることも不可能です。
運動に利用されるイメージがどんな要因から構成されるのかを説明しましたが、実際に運動を起こすにあたってどこでイメージが関与するでしょうか。
運動を起こす前に、運動の意図・企画が脳内で行われます、そこにイメージも含まれ関与しています。
脳の運動前野が主役として運動の企画や準備を行いますが、そこで、「意識的なイメージ」は関与し、『運動の実行の判断・計画をする前頭前野』や『運動実行の指令を送る運動野』、『運動を調整する小脳』とも関係する。
意識的な運動を反復することで神経可塑性を通じて運動プログラムが作られ、自動化していきます。
しかし、無意識に自動化されたイメージにおいては、似たメカニズムではありますが、自動化された運動においては、運動プログラムを効率的に実行する・運動の無駄を省く基底核や小脳が強く関与します。
これは最初は意識的に注意深く行っていた運動が運動学習を通して、無意識に自動化されていくことで運動前野の関与より、基底核や小脳の関与が強くなります。
前頭前野に関しては、状況に応じた判断で動作の選択をしています。

【自動化された運動】の例として、自転車の運転が挙げられます。
自転車に乗れる人は、もはや意識的にバランスや動作に注意を払わなくても、自然に運転できる状態にあります。
これは、自転車と身体の感覚が統合され、まるで自転車が自分の身体の一部のように動かせるからです。
このような状態は、古くから「人馬一体」という四字熟語で表現されてきました。
これは、騎手と馬が完全に一体となって動き、巧みに馬を操る様子を表す言葉です。
自転車においても同様に、自分と道具(自転車)が一体化し、意識せずとも自然な動作が可能になるのです。
自転車運転の「自動化された運動」は、いくつかの条件が整っているときに成立します。
たとえば、『自分の体に合ったサイズの自転車(サドルやハンドルの高さが適切であること)』、『心身のコンディションが良好であること』、『地面が平坦で乾いていること』、『障害物がないこと』、そして『天候が安定していること』などが挙げられます。
これらの条件が揃うことで、意識的な注意を払わずともスムーズに運転できる状態、いわゆる「自動化」が可能になります。
しかし、たとえば【普段シティサイクル(いわゆる“ママチャリ”)に乗っている人】が、ロードバイクやマウンテンバイクに初めて乗るような場合や、手足をケガしている状態では、普段は無意識にできていた運動にも意識的な注意が必要になります。
つまり、自転車という「道具」のカテゴリだけで「自動化された運動」を一括りに捉えるのではなく、環境や身体状況、使用する道具の特性といった要素を複合的に捉える視点が重要になります。
おにごっこや自転車の運転の例えを通じて、イメージが運動に含まれていることが理解できたと思います。
最後に
最後まで記事をお読みいただきありがとうございます。
拙い文章で申し訳ありませんが、ご理解いただけたでしょうか。
イメージとは主観的で、個々の持つ様々な要因が複雑に関係し、再構成されたものです。
そしてイメージは流動的に変化します。
これは自分だけの世界でもある為、運動やそれ以外において自分に矢印を向けて、何かを得たい場合は、自分のイメージがどんな要因から構成されているのかについて考えてみるのは如何でしょうか。
自分を知る又は変えるきっかけの一つになるかもしれません。
それでは、また別の記事でお会いしましょう。
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