なぜ「アドバイス」が「ジレンマ」や「葛藤」につながる可能性があるのか
皆さん、この記事に興味を持って頂きありがとうございます、です。
現代は、インターネットや他者を通じて多様な情報(主観的なものから客観的なデータまで)を容易に得ることが出来ます。
しかし懸念されるのは、それらの情報は【質・趣旨・ターゲット】がバラバラで受取る側のリテラシーが求められる事です。
そのため受け取る側の状況や理解度、価値観などによって、誤解や間違った情報に丸め込まれてしまうこともあります。
またこれらは、インターネット上だけでなく他者(家族・学校・習い事・会社など)との関りの中でも起こります。
「アドバイス」も相手にとって情報になります。
「アドバイス」は日常であふれるほど使われます。
そしてその多くは、アドバイスをする側の善意によるものです。
しかし、善意であっても、聞く側にとってみると誤解や間違った伝わり方によって心のつっかえや悩みを深刻化させてしまう場合もあります。
極端な例えを挙げると、行き詰っている相手に対して、「周囲と比較してまだまだ量が足りない。有名な○○選手はこれぐらい簡単にやっているよ、もっと回数や量をやらなきゃ成長しないよ」とだけアドバイスしたら、相手はどう受け取るでしょうか?

厚く高い壁にぶつかって悩んでいる状況で、「もっと押せ」と言われている気がして、悩みが解消される方向には行きづらいかもしれない。

そうですね。相手の状況や相手との関係性、伝える内容、タイミングなどを考慮する必要はありますね。
しばしば聞く話として、特定のスポーツをやる目的で高校や大学を選択し入学したが、指導者と馬が合わず辞めてしまう人もいます。
この記事では、「アドバイス」をする側の視点で、相手に「ジレンマ」や「葛藤」を引きおこす可能性がある事を説明していきたいと思います。
「アドバイス」とは?
まず、「アドバイス」とは何かについて説明していきます。
アドバイスを使う場面を思い浮かべると両者の関係にパターンが見られます。
経験の量や専門性の高さで一方的に行われることが多いと思います。
次に「アドバイス」の定義についてみていきましょう。
「アドバイス」の定義

問題解決のために解決案を提案・指示すること。
アプローチの方法
-
相手の行動や考えに影響を与えるために、具体的な提案や指示を行います。
直接的なコミュニケーションスタイルが多く、「こうした方がいい」「これをしてみては?」といった表現を用います。
役割
-
専門的なスキル・知見や、実生活で得た経験を活用し、相手が直面する課題・問題に対して「選択肢」や「解決案」を提示します。
相手が自分の考えを整理したり、行動に移す助けとなります。
依存関係(アドバイスが何を頼りに構成されるか)
-
経験、専門知識、一般常識、あるいは第三者から得た情報など、知識ベースに依拠し知識の質や信頼性が、アドバイスの有効性や説得力を左右します。
結果のタイムライン(行動計画)
-
短期的な行動を想定し、アドバイスの多くは、「今すぐ」「今日から」実践できるような具体的行動を促します。
長期的な成長や変容につながるケースもあるが、主な狙いは即効性や目の前の課題の改善になります。
要するに、「アドバイス」とは「何をするべきか」を教えることです。
そして、やり取りが一方的に近く問題解決の為にスピードを重視します。
「アドバイス」のメリット・デメリット
次に「アドバイス」の利点・価値と欠点・短所について説明します。
タブをタップすると詳細が見れます
スピーディな問題解決
-
時間に制限がある緊急の課題に対して、知識を基にした一方的な提案や指示は、短期間での問題解決につながる可能性があります。
経験と知識を活用
-
アドバイスは、知識や経験に依存するため、説得力を得やすくなります。
明確な方向性を示す
-
「複雑な問題」や「迷っている状況」において、アドバイスは明確な方向性やタイムラインを示すことに繋がります。
即座に実行可能である
-
アドバイスは通常、直ぐに実行できるアクションプランを提供するため、短期的な行動を促進します。
現代においては、アドバイスが相手に対して一方的なものにならないように、双方向の関係(意見交換をする)の中でアドバイスを利用することが重要と言われています。
「ジレンマ」とは何か?
「ジレンマ」とは何かについて説明していきます。
この言葉を聞いたことがある人は、多いのではないでしょうか。
そして誰もが「ジレンマ」を抱えたことが多かれ少なかれあると思います。
次に「ジレンマ」の定義について説明します。
「ジレンマ」の定義

2つ以上の選択肢の間で、選択することが困難な状況や相反する価値観や利益が対立して、どれを選択するべきが決断できない状態を指します。
想定される状態を以下に記載します。
対立する選択肢
-
異なる選択肢が、どれも重要であり、どれかを選択することで他の選択肢に対する利益を犠牲にすることになります。
迷い
-
どれを選択しても、後悔や不安が伴う事が多く、決断を下すのが困難になります。
道徳的・倫理的な対立
-
しばしば、基本的な価値観や社会的・個人的な信念が矛盾するため、決定が困難になります。
選択肢の対等性
-
選択肢がどれも一概に「良い」「悪い」を決めつけることが出来ないことがあります。
不確実性と予測可能性
-
状況や選択肢の結果が明確でない、または将来の出来事を正確に予測できないことによって、判断が困難になります。
時間的・感情的な制約
-
急な選択を迫られる場合や感情的に自分にとってどちらも外せないと感じる選択をする場合に判断は困難になります。
要するに、対立する選択肢や価値観が存在し、どちらも重要であると感じていて、その選択肢の狭間で考えが揺れ動く事です。
「ジレンマ」の期間的な考え方
それでは、次に「ジレンマ」を主観的な期間で分類して説明します。
一時的なジレンマ
非常に短期間で解決可能なものであり、しばらくすれば自然に状況が変化し、解消されることが予想できます。
解決方法は比較的簡単で短期間で選択肢の決定が可能な場合に見られます。
例えば、サッカーのトラップ(向かってきたボールを身体を使って止めること)が挙げられます。
自分に向かってきたボールを身体のどこの部分でどの方向にどれくらいの強さでトラップするかを瞬時に選択することです。
短期的なジレンマ
短期間内に解決する必要があり、選択を急がなければならないが、一定の時間をかけて考えることができる状況です。
解決方法が一時的なものであったり、選択肢に明確な利害関係が存在することが多いです。
例えば、サッカーのゴール前の場面において、シュート(どこを目掛けて蹴るのか・足のどこで蹴るのか)とパス(目標の相手・ボールの質)の選択が挙げられます。
長期的なジレンマ
長期間継続するジレンマで、選択の結果が長期的に影響を及ぼす場合です。
このタイプは時間をかけて熟考したり、今後の人生に大きな影響を与えるような選択が含まれることが多いため、解決には慎重さが求められます。
例えば、自分のサッカー人生を考えた時、自分のプレースタイルを変更するか、しないかという選択肢が挙げられます。
永久的なジレンマ
解決が難しく、永久的に解決しないか、非常に長期間解決を見込めないジレンマを指します。
このタイプのジレンマでは、どちらの選択をしても何らかの不満や後悔が残り、完全な解決が難しいと感じる場合に該当します。
選択肢が一度選ばれると、元に戻すことができないこともあります。
例えば、競技スポーツと自分の人生のバランスが挙げられます。
競技スポーツにかける時間と学業又は仕事、家族や恋人との時間をどう天秤にかけて選択するのか、判断は 艱難辛苦 します。
選択肢のどれかを選ぶことが解決です。
決して「正しさ」や「最良の結果」を意味するわけではありません。
運動やスポーツで起きる「ジレンマ」の例
運動やスポーツの中で起きる「ジレンマ」について〖指導者〗と〖プレイヤー〗の視点で其々考えてみたいと思います。
タブをタップすると詳細が見れます
個人の成績とチームの勝利
個人の成績(ゴールやアシスト等)を重視すると、チームの勝利が下がる可能性があります。
チームの勝利を選択すると、個人の成績は下がる可能性があります。
短期的な成功と長期的キャリア
短期的な成功を選択すると、考えの視野が狭くなり、オーバーワークやケガを抱えながらのプレーにより、長期的なキャリアに悪影響を来す可能性があります。
長期的なキャリアを選択すると、短期的な成功における、一刻の情熱や貫徹するなどのモチベーションが犠牲になります。
個人的な目標とチーム戦術
個人成績とチームの勝利に通じますが、個人の目標を選択すると、チームの戦術である個々の役割が統一できず犠牲になる可能性があります。
チームの戦術を選択すると、個人の目標よりもチームを優先するため、個人の目標は犠牲になる可能性があります。
チームの役割と自己成長の目標
チームの役割を選択した場合、チーム内での自分が果たすべき役割が優先され、自己成長の目標が犠牲になります。
自己成長の目標を選択すれば、チーム内で要求されている役割は犠牲になる可能性があります。
チームメイトとの関係と競争
チームメイトの関係を選択すると、チームメイトとの協力や友情は大切にできるが、スポーツにおける競争が犠牲になる可能性があります。
競争を選択すれば、自他に対して厳しいプレーを行いポジションを奪取・維持する可能性はあるが、チームメイトとの関係性が希薄にになる可能性があります。
プレッシャーとメンタルヘルス
競技レベルが高くなるにつれて、常に高いパフォーマンスを要求され、プレッシャーを受けます。
プレッシャーを過度に受ければ、精神的な健康が損なわれる可能性があります。
しかしプレッシャーがないと、競技に対する意欲も犠牲になってしまう可能性があります。
【スポンサーリンク】
「葛藤」とは
「葛藤」とは何かについて説明していきます。
この言葉も「ジレンマ」と同様に聞いたことがある人は多いともいます。
そして経験したことがある、又は現在も抱えている人もいると思います。
次に「葛藤」の定義について説明します。
葛藤の定義

対立する感情や思考、意志などが同時に存在し、これらが相互に影響を与え合うことによって生じる心の不安定な状態を指します。
価値観の対立
人はそれぞれ異なる価値観を持っています。
価値観が対立すると、決断や行動に迷いが生じ、葛藤を引き起こすことがあります。
欲求や欲望の対立
欲求が相反する場合にも葛藤が生じます。
例えば、「目標達成のために一生懸命働きたい」という欲求と、「もっとリラックスしたい」という欲求が対立する場合、どちらを選ぶべきかで悩み、葛藤が生まれます。
自己矛盾
自分の思考や行動が矛盾しているときにも葛藤が生じやすくなります。
例えば、「健康的な生活を送りたい」と思っている一方で、「甘い物を食べたい」といった欲望が衝突すると、心の中で葛藤が発生します。
情報の不確かさ
十分な情報がない状態で意思決定を迫られると、選択肢を選ぶことに対して不安や迷いが生じ、葛藤を引き起こすことがあります。
これは「選択のパラドックス」とも呼ばれ、どれが最善の選択かを決めるのが難しくなることがあります。
外部からのプレッシャー
社会的圧力や他者からの期待も葛藤を引き起こす要因となります。
例えば、親の期待に応えようとするあまり、自分のやりたいことを犠牲にする場合や、職場での昇進を目指す一方で、プライベートな時間を重視したいという間での葛藤が考えられます。
恐怖や不安
未来への不安や失敗への恐れが葛藤を生むことがあります。
特に選択肢に対する不確実性やリスクを感じると、どの行動を取るべきかで迷い、心の中で葛藤が強くなります。
過去の経験
過去の経験や失敗が影響を与えることもあります。
過去に取った選択が失敗につながった場合、それが引き起こす恐れや後悔が、新たな決断に対して葛藤を生じさせることがあります。
役割の衝突
生活の中で異なる役割を果たすことが求められると、それが葛藤を生むことがあります。
例えば、家庭の中で親としての役割と職場での役割が衝突する場合、どちらを優先すべきかで迷い、葛藤が生じることがあります。
選択肢が多い
選択肢が多すぎる場合、それを決定すること自体が葛藤を引き起こす原因となります。
選ぶべき選択肢がたくさんあると、どれが最適かを選ぶのが難しく、決断を下すのにストレスを感じることがあります。
要するに、個人の内面(心の中)で異なる欲求、価値観や目標がぶつかり合い、どうしたら良いか混乱している状態です。
運動やスポーツで起きる「葛藤」の例
運動やスポーツの中で起きる「葛藤」について〖指導者〗と〖プレイヤー〗の視点で其々考えてみたいと思います。
タブをタップすると詳細が見れます
勝利優先と個人の成長
指導者は試合での勝利を目指すと同時に、プレイヤー個々の成長も重視しなければなりません。
例えば、試合の最中に若手プレイヤーを起用したいが、試合の勝敗が重要であり、実績のあるベテランプレイヤーを使う方が勝つ可能性が高いと感じることがあります。
個別対応とチーム全体のバランス
プレイヤー個々に対して個別の指導やケアが必要ですが、チーム全体の調和や戦術的な一体感も重要になります。
例えば、ある選手が技術的に非常に優れていて、個別のトレーニングを行いたいと感じる一方で、チーム全体の戦術を重視して個々のプレーを調整する必要もあります。
即効性のある戦術 と長期的な戦術
試合や大会で即効性のある戦術を採用するべきか、それともプレイヤーやチームの成長を見越して、より長期的な戦術を選ぶべきかという葛藤が生まれます。
例えば、短期的には勝つための戦術(攻撃的、リスクを取る戦術)を選びたいが、長期的には守備の強化や戦術的な安定性を築くべきだと感じる場合が挙げられます。
競争とチームの調和
指導者はチームの中での競争を促し、プレイヤーにもっと努力させる必要がありますが、その一方で、過度な競争がチーム内での対立や不和を生む可能性があります。
例えば、レギュラー争いをしているプレイヤーたちが互いに競争心を燃やしてプレーしている状況では、チームとしての一体感が損なわれる可能性があります。
プレイヤーの心のケアと成果主義
プレイヤーの感情面やメンタル面のケアが必要である一方で、結果を出さなければならないというプレッシャーもあります。
例えば、プレイヤーがパフォーマンスの低下やメンタル的な問題を抱えているとき、指導者はそのケアをしながらも試合での勝利を求められます。
「ジレンマ」と「葛藤」の違いとは

「ジレンマ」と「葛藤」の意味を混同してしまうため、2つの違いについても説明します。
前記の内容を読んで、2つの言葉の内容が似ている、共通していると思った方もいるのではないでしょうか。
2つの異なる点を以下に表にして記載します。
項目 | ジレンマ | 葛藤 |
定義 | 対立する選択肢の中で、どれを選ん でも問題が生じる状況 | 異なる価値観や感情、目標が対立す る状態 |
選択肢 | 複数の選択肢があり、対立している | 選択肢がある場合、ない場合がある |
決断の必要性 | あり | 即決を要しない場合もあり、迷う |
感情的側面 | 理論的・倫理的要素が中心 | 感情的な葛藤が強く関与 |
視点 | 基本は客観的な状況・決断は主観的 | 主観的 |
タイプの広がり | 明確な対立する選択肢が存在 | 内的葛藤や外的葛藤など多様な形態 |
ジレンマは客観性が基本にあり、対立する選択肢が天秤に掛けられ比較されます。
それに対して葛藤は主観による内的な対立に重点が置かれています。
この二つは、相互的な関係で、同時に出現することは、多くあります。
アドバイスがジレンマや葛藤を引き起こす可能性

前記を通して、「アドバイス」・「ジレンマ」・「葛藤」について理解されたと思います。
そしてこの段階で、なぜアドバイスがジレンマや葛藤を引き起こす可能性があるのかという理由が薄々理解できると思います。
既に相手が「ジレンマ」や「葛藤」を抱えていて、その問題に対してアドバイスをする状況ではなく、アドバイザーが一方的に相手にアドバイスをすることを条件に考えてみます。
「アドバイス」が「ジレンマ」・「葛藤」を引き起こす要因について考えてみましょう。
アドバイスそのものが、相手の価値観・信念・過去の経験・自己決定感・他者からの期待などと衝突する場合に生じます。
- アドバイザーとの関係性が希薄・一方的
-
アドバイスは、相手が受容する態度が無ければ、一方的な押し付けになってしまいます。
信頼や共感の欠如は、アドバイスの受容に 難儀 しジレンマや葛藤につながる可能性があります。
- アドバイスが曖昧
-
情報が相手に理解されなければ、誤解や間違った行動につなが可能性があります。
「何をすべきかわからない」状態では、選択肢や行動計画が立てにくくなり、不安や焦りを助長し、ジレンマや葛藤につながる可能性があります。
- アドバイスと価値観の対立
-
アドバイスの内容が、相手の価値観と対立する可能性があります。
人は自分の持つ価値観の上で行動しています。
それを違う価値観へと変えることは、簡単ではありません。
自尊心の低下や将来への予測が崩れる可能性があり、ジレンマや葛藤につながる可能性があります。
- アドバイスが自己決定権の侵害と感じる
-
一方的なアドバイスは、相手の主体性や決断力を侵害する可能性があります。
- 過去の経験や失敗
-
過去に選択を失敗したことがあり、新しい選択肢の提案に対し恐れや不安、自己効力感の低下を抱えることがあります。
また過去に成功した方法やパターンがある場合、変更する必要があるのかの判断に悩み、ジレンマや葛藤につながる可能性があります。
- 他者からの期待や圧力
-
アドバイスの内容や伝え方が、相手に見合っていない場合にその行為が心身のストレスへとつながり、葛藤やジレンマを生むことになります。
- 不確実性と予測の難しさ
-
先の見通しがしづらいアドバイスにはリスクを感じ、どれが正しいのか迷うことがジレンマや葛藤を助長する可能性があります。
前記の要因などが複雑に関係し、ジレンマや葛藤が生じます。
勿論アドバイスが無くても、ジレンマや葛藤は生じるものです。
そしてアドバイスが正しくても生じます。
そのため、相手にジレンマや葛藤を生じさせない完全無欠のアドバイスはありません。
相手の状況や価値観、感情などによって受け取り方は異なります。
アドバイザーは一方向的なアクションを避け、相手との関係性を双方向のコミュニケーションを通じて構築することが前提になります。
そして普段のコミュニケーションの中で相手の状況や価値観、感情を把握し、アドバイスは相手のペースや思考・理解度に合わせて行うことが必要になります。
最後に
最後までお読みいただきありがとうございます。
拙い文章で申し訳ありませんが、ご理解いただけたでしょうか。
それではまた別の記事で会いましょう
コメント